ボーダーライン。Neo【下】


 あの記者の書いた“新事実”で、世評は大きく揺れ動いた。テレビを見る限りでは、Hinokiの人気は瞬く間に落ちてしまったらしい。

 きっとネットを見れば、もっと酷い罵詈雑言で溢れかえっているだろう。

 それはHinokiだけでなく、雑誌に書かれた一般女性のS子、つまりあたしに関しても同様だ。

 芸能ゴシップ誌の“New Hour”では、S子さんは既に婚約中の男性Kさんを裏切り、元カレであるHinokiとヨリを戻したと書いてあった。

 HinokiはKさんから婚約者を略奪したと書かれ、完璧すぎる外見に対して、内面は身勝手で傲慢なのかもしれないと記者個人の、偏見とも取れる意見が綴られていた。

 ーーやっぱり、慎ちゃんが情報をリークしたんだ。

 そう思うと憂鬱に支配された。

 雑誌を読むと当事者しか知り得ない情報が書かれている。

 彼にとっては、浮気は悪で、女性の裏切りはタブーだ。だからあたしに対して、未だに怒りを感じているのだろう。

 あたしは深くため息を吐き出し、ゴシップ誌を閉じた。

 雑誌やテレビを見ただけでも嫌な気持ちになるのだから、ネットの中はもっと悪質だろう。
 匿名性を利用して、見ず知らずの人が過激な発言を繰り返している。

 だからあたしは、ネット掲示板に関しては一切見ないと決めていた。