あたしは口を真一文字に結び、とにかく門扉へと手を掛けた。
「取材に応じて貰えれば、悪いようには書きませんよ? またお時間のある時に名刺の番号へお電話頂ければ…」
「帰って下さいっ、警察呼びますよ!?」
ようやくその一言だけが言えた。門扉を開けて庭を歩くと、尚も声が追いかけてくる。
「幸子さーん、答えて下さいよー? 左手のそれ、婚約指輪ですよねー? Hinokiとの結婚、もう決まってるんでしょー??」
飼い犬の柴犬、タロウが男性の声を警戒し、ワンワンと吠え始めた。
あたしはタロウに「ありがとう」と言い、家の中へと逃げ込んだ。
心臓がバクバクと暴れまわっている。
ーーどうして? なんで??
もしかして、慎ちゃんがあの記者に?
あたしの日記を読んだ慎ちゃんが、記者に情報を売ったの??
そう考えたところで、まさか、と否定したい気持ちの方が勝っていた。あたしはまだ慎ちゃんに対して情を抱いていた。
何にせよ、怖かった。記者の取材力というものがこれほどまでに威圧的だとは思わなかった。
「幸子、幸子っ」
玄関で靴を脱ぐと、慌てふためいた様子で母が駆けてきた。
「お、母さん、どうしたの?」
「あんたどこ行ってたの?? テレビ、いま大変な事になってるわよっ!?」
「ーーえっ!」
母の取り乱しようで、胸が一気にざわついた。居間にあるテレビでは、丁度お昼のワイドショーが報道されている。



