いつまでも無収入ではいられない。そろそろちゃんと働かないと、貯金も出来ない。
あたしは窓際に面した雑誌コーナーで、仕事情報誌を物色していた。
当分は実家住まいと断念し、この近辺で職を探すつもりだ。低価格で売られている薄い冊子を二冊ほど手にし、レジへと運ぶ。
いらっしゃいませ、と男性店員さんが挨拶をした。ポイントカードの有無に、いえ、と首を振る。
そこでふと、レジ付近に作られた簡易な陳列棚に気が付いた。
店員さんの計らいか目立つポップが飾られ、大きく‘必見’と書かれている。
【必見!! 本日発売の週刊誌、New Hour。Hinokiの熱愛に新事実浮上!!】
「……え」
ーー何これ……。
とてつもなく嫌な予感がした。
Hinokiの名前に新事実と銘打たれ、動揺しないはずがない。
感情の赴くままに、あたしは平積みされた雑誌を手に取っていた。表紙を見ると、特集記事の見出しにでかでかと
【Hinokiの熱愛に新事実! 略奪愛と過去に背徳の影!!】
と赤文字で書かれている。
雑誌を持つ指先が微弱に震え出す。嫌な汗が背中を伝った。中の記事を読まずとも、表紙を見るだけで容易にその【新事実】が想像出来た。



