ーーまさか。
「それを、彼女の婚約者に……渡した?」
「……っ」
「幸子の婚約者のカサイって男に、茜が渡したのか??」
茜は口を結び、おどおどと首肯する。
ーーそうか。それでか。
僕にとって不可解だった点が、ここでようやく繋がった。
あの男が何故幸子のメモを持っていたのか、それが本当に謎だった。
「檜。葛西さんに、会ったの?」
「ああ、まぁ。ちょっとな?」
深刻な茜の口調に対して、曖昧な返事を返すが、茜は何かを理解した様に、サッと顔色を暗くした。
「茜?」
彼女の様子を訝しみ、声を掛ける。
「……この間。その葛西さんから急に、電話がかかってきたの。檜の、一週間の休暇中に」
「え……」
「電話に出てすぐ、秋月 檜はどこにいるって訊かれて」
「なっ、それで??」
「わたし、プライベートは教えられないって言ったんだけど。そうしたら葛西さん、質問を変えるって」
「なんて?」
「檜は今休暇中じゃ無いのかって、十七日から一週間休んでるだろ? って」
そこで僕は言葉を無くした。
ーースケジュールが漏れている。何でだ?



