「わたし。あのデータは幸子さんにしか見せて無いし、すぐに写真も削除したっ」
動揺する彼女を見て、僕は、あ、と口を開ける。
「そっか。茜は知らないんだよな? あの写真、間接的に拾われて。学校中にばらまかれたんだ」
「……え」
「それで幸子は辞職して、俺たちは別れた」
元後輩である女子生徒の一件を簡略化して伝えたのだが、茜はその内情を悟った様に、何も訊かなかった。
「そんなの、知らなかった」
ただそう一言漏らし、わたしのせいで、と呟く。
「茜のせいじゃないよ」
「え……」
「あの時は別れに繋がるまで、本当に色々な事が有ったんだ。だから俺は、今さら茜を責める気なんて」
「やめてよ……っ!」
「え……」
「檜は知らないからっ」
「知らない?」
僕のオウム返しに、茜は無言で頷いた。手にしたペットボトルをギュッと握り締め、未だ蓋も開けようとしない。
きっと、僕にとって重要な事実を告げようとしている。そう感じ取った。
「わたしは去年。檜の部屋で見つけたメモを、勝手に持ち帰ったの」
ーーメモ。
「檜と関係を持ったあのいかがわしい内容を見て……、つい。カッとなった……っ。本当にごめんなさい」
メモと聞いて思い浮かぶのは、幸子が部屋で書いたあの書き置きだ。
肩をすぼめる茜を見つめながらも、僕はひとつの可能性に気が付いた。
動揺する彼女を見て、僕は、あ、と口を開ける。
「そっか。茜は知らないんだよな? あの写真、間接的に拾われて。学校中にばらまかれたんだ」
「……え」
「それで幸子は辞職して、俺たちは別れた」
元後輩である女子生徒の一件を簡略化して伝えたのだが、茜はその内情を悟った様に、何も訊かなかった。
「そんなの、知らなかった」
ただそう一言漏らし、わたしのせいで、と呟く。
「茜のせいじゃないよ」
「え……」
「あの時は別れに繋がるまで、本当に色々な事が有ったんだ。だから俺は、今さら茜を責める気なんて」
「やめてよ……っ!」
「え……」
「檜は知らないからっ」
「知らない?」
僕のオウム返しに、茜は無言で頷いた。手にしたペットボトルをギュッと握り締め、未だ蓋も開けようとしない。
きっと、僕にとって重要な事実を告げようとしている。そう感じ取った。
「わたしは去年。檜の部屋で見つけたメモを、勝手に持ち帰ったの」
ーーメモ。
「檜と関係を持ったあのいかがわしい内容を見て……、つい。カッとなった……っ。本当にごめんなさい」
メモと聞いて思い浮かぶのは、幸子が部屋で書いたあの書き置きだ。
肩をすぼめる茜を見つめながらも、僕はひとつの可能性に気が付いた。



