『……今とあの時の状況。規模は違っても同じなのかなって。何となくそう思ったの』
ーーえ。
『写真や動画を撮られたから……あの時みたいにしらを切る事は出来ないけど。時間がきっと解決してくれる』
「……そうだな」
『それにあたし。今プータローで何にも仕事してないから、ほとんど家に引き籠もってて。そんな大袈裟な事になってるの? って。イマイチ実感が無いの』
可笑しいよね、と言い、幸子は笑った。
「その方がいいよ。俺も今、缶詰め状態で外には一切出ていないから」
おかげで何件もの仕事に穴を開けて、事務所にも迷惑を掛けている。
『ふふっ。でもね? 弟夫婦が実家で暮らしてるから。正直、出戻りって感覚が申し訳なくて』
「えっ? 弟さん、もう結婚してるんだ??」
『うん。去年なんだけどね。先いかれちゃったよ?』
おどける様子を想像し、僕は頬をゆるませた。早く逢いたいとまた思ってしまう。
『あ! てかさぁ、弟がね。早く檜を連れて来いってうるさくて』
「……え、マジで?」
『マジで。全然緊張感無いんだよ? お父さんとお母さんも呆れてる』
「ハハっ、そうなんだ?」
うん、と幸子が困った様子で嘆息する。
「おじさんとおばさん。今回の事、怒ってるよな?」
僕は心配事のひとつを、この際だからと吐き出すが、幸子は不思議そうに否定した。



