僕は携帯を手にし、今日も幸子にメールを送る。
メールの内容は、おはようの挨拶から始まり、ニュースを見て気落ちした事など、取り留めの無いものを書いたのだが。彼女と何かしら連絡を取っていないと不安になった。
ネットに流れる僕の評価は徐々に悪くなり、熱愛相手の一般女性に関しては、心無い言葉で暴言が飛び交っていた。
スキャンダルを報じられてから三日目の午後。習慣と化した手つきで幸子に電話すると、彼女は気丈にも笑って言った。
『大丈夫よ? こっちは殆ど影響ないから』
その口ぶりに幾らか安堵が広がる。
きっと、ネットに流れる匿名の投書を読んでいないんだ。幸子が涙に暮れていない事を知り、心底ホッとしていた。
『ねぇ、覚えてる? あなたがまだ高校三年生の頃、学園祭の後だったかな。
あたしとあなたの噂話、学校内で広まったよね?』
幸子に問われ、過去の記憶を手繰り寄せた。
「ああ。覚えてるよ。確か夏休み前だった。
あの時は一方的に幸子が悪く言われて……かなりムカついたな」
『ふふっ、そうだね。生徒に手を出す淫行教師、とか。初めて言われたもん』
苦々しい笑みが漏れる。
携帯を耳に押し当てたまま、僕は深くソファーに座り直した。
「何で急にそんな事?」
ふと気になって訊いてみる。すると幸子は穏やかに言った。



