ボーダーライン。Neo【下】


 ◇ ♂

 写真を撮られた翌日。僕は朝の情報番組を見て、眉間にシワを寄せた。

 空港でのスキャンダルに、コメンテーターが意気揚々と解説している。

『えー、続いてこちらが問題のシーンです』

 男性コメンテーターの声と共に映像が切り替わる。

『この映像は、偶然その場に居合わせた一般人の方が携帯電話を使って撮影したものらしいですが。
 こちらの女性がHinokiさんのお相手なんですねぇ』

 昨日撮られた空港内の動画には、僕と幸子らしき女性の姿が映っていた。

 幸子が写真に入らないように背中で隠しているが、別の角度から撮られた動画では幸子の雰囲気がしっかりと映されていた。

 一般人なので当然顔にはモザイクが掛けられているが、見る人が見れば彼女だと分かるだろう。

 痺れを切らした僕は、やがて幸子の手を引き、傍観者の群れの中を走り去って行く。その一部始終が編集を交えて報道されていた。

 ああ、これで殆どの人がHinokiの熱愛を知ってしまった。そう思い、ガックリと肩が落ちる。

 今日から一週間、事務所はゆうに慌ただしくなるだろう。仕事が始まるメンバーに迷惑をかけるのも申し訳ない。

 昨日は夕方を過ぎてから、幸子と電話で話をした。

 彼女が無事に帰れたかどうかや、マスコミ対応の為にまたホテルで缶詰生活が始まった事を話し、電話を切った。