ボーダーライン。Neo【下】


 汚いなぁ、と文句をこぼし、それを捨てる為に立ち上がるが、悠大は素知らぬ顔でテレビのリモコンを操作する。

「幸子、ちょっと早いけど今」

「あっ!! またHinoki熱愛だって!!」

 ーーえ。

 丁度母がリビングに入った時、悠大がテレビに映る芸能ニュースを見て声を上げた。

「今度は一般女性だってさ。やっぱ顔が良いだけあって遊んでるよな〜」

 アハハと呑気に笑う悠大とは対照的に、あたしは突っ立ったままテレビ画面を注視し、氷のように固まっていた。

 檜の背に隠れる一般女性、つまり、あたしの顔にはモザイクが掛けられている。けれど、服装や髪型は今と全く同じものだ。

 ーーお母さん、気付く? 流石に気付いた、よね?

 恐々と母に視線を送るが、母は目を細めただけで、何も咎めなかった。代わりに悠大に声を掛けている。

「悠くん、テレビちょっと消しててくれる?」

「えー、何で? 今この一般女性が誰かって話してるところなのに」

 今ちょうど良いところなのに、と口を尖らせる弟を母が一言で黙らせた。

「その一般女性はお姉ちゃんの事だから、テレビ消しててちょうだい」

 ーーえ!!

 あたしはビクッと肩を震わせ、母を見た。