部屋のテレビを点けると、空港での騒動が芸能ニュースで取り沙汰されていた。思わず目を見張る。
ソファーに座り、ディスプレイに映った自分を見て、僕は唖然とした。マスコミの迅速な対応には舌を巻くばかりだ。
スキャンダル。本当の意味でのスキャンダルだ。四ヶ月前のそれとは違い、今回は動画付きなので、さぞ真実味があるだろう。
その光景を見て、まるで他人事のように口元が緩んだ。テレビの中で慌てふためく僕は、なんて滑稽なんだろう。
ーー幸子はちゃんと帰れたかな?
鞄の中からスマホを取り出し、彼女の番号を表示させると、流れる手付きで電話を掛けた。
彼女の母親に挨拶へ行くと言った手前、こんな騒動を報じられるなんてたまったものじゃない。芸能人はこれだから困ると、結婚前から離縁を突き付けられそうだ。
規則的に続くコール音は、温かみのないガイダンスへと繋がった。
ーー出ないな。
仕方なく、また電話して、とメールを書いて送る事にした。
このスキャンダルが原因で、幸子の心が離れてしまわないだろうか、と。嫌な想像ばかりが脳裏をよぎった。
一度立ち上がり、備え付けの冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、口を付ける。半分ほど飲み干し、考えていた。
そもそも何故、あの場所に都合良く記者が居合わせたのだろうか?
幸子との別れぎわを思い出し、眉間にシワが寄る。
ーー「ホントだ。本当に現れた……っ!」
あの口ぶりはまるで誰かから事前に知らされたみたいだった。
考え過ぎ、だろうか?
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