ボーダーライン。Neo【下】


 当時教師をしていた幸子と初めてこの店に来たのは、およそ七年前だ。日本で手に入れた向日葵のネックレスは、元を辿ればこの店で出会ったのがきっかけだった。

 ガラス越しに色々な種類のネックレスを吟味していると、外国人女性の店員に捕まり、返答に困る幸子に気が付いた。

 ーー直接訊いた方が早いか。

 仕方なく幸子の後ろへ近付き、店員に声を掛ける。

「(すみません、七年程前にここで売っていたネックレスについて聞きたいんですけど)」

 幸子はキョトンとした様子で僕を見上げた。

「(七年前、ですか?)」

「(はい)」

 女性店員は信じられないと言いたげに、言葉を詰まらせた。

「(……どんなタイプのものですか? もしかしたら製造が無くなっているかもしれません)」

「(ああ、ええと。素材はプラチナで、ひまわりの花をモチーフにしたネックレスなんですけど)」

 Sunflower、と小さく呟き、店員はカウンターの奥に仕舞ってあるぶ厚いファイルを捲り始めた。

「(お客様。お探しのネックレスはこちらの物ですか?)」

 店員が指し示す写真を見て、あっ、と顔を綻ばせた。