ボーダーライン。Neo【下】


「あ! 次行きたいとこ思い付いた! ちょっと遠いけど行っていい?」

「うん」

 地下鉄でホルボーンの駅まで戻ると、別のラインに乗り換え、コヴェント・ガーデン駅に降り立った。そこからはタクシーで移動する。

 僕が運転手に行き先を告げると、幸子は英語の店名を聞き取り、首を傾げた。

「ねぇ。どこに向かってるの?」

「うん? まぁ、いいからいいから」

 着いてからのお楽しみ、と言い足し、僕は破顔した。

 実のところ、結婚を考えるにあたって、幸子に指輪をプレゼントしたいと思っていた。さっきの話から、過去に渡したネックレスも恐らくはもう手元に無いのだろう。

 物で釣るみたいで気が引けるが、あの男より良いものを渡したいというのが、僕なりのプライドだ。

 程なくしてタクシーが停まり、一軒のアクセサリーショップに辿り着いた。

「……ここって……?」

 来た事が有るような無いような、という口振りで、幸子は首を捻っている。

 彼女の手を引き、店内へ入った。ショーケースに並ぶネックレスや指輪、ピアスにブレスレット。

「……わぁ」

 どこのアクセサリーショップとも似通った煌びやかな雰囲気に、幸子は魅了され、感嘆の声を漏らした。

 僕はネックレスを中心に置かれたショーケースを覗き込み、記憶を頼りに()()ネックレスを探していた。