まだ高校生だった頃。片思いの幸子にアピールが過ぎて、うっかり友達の内田に勘付かれた。
アレと同じ事を今更するわけにもいかない。慎重に行動しないと、世間に交際がバレてしまう。
イギリスでは顔も知られていなくて、警戒心なんてこれっぽっちも無いけど。日本に戻ったらそうもいかない。
僕の職種のせいで、幸子との付き合いに制限が課せられるし、それこそバレたら大ごとになる。
そう考えて、昔の幸子も同じだったんだよなと気付いた。生徒の僕と付き合って、自分の仕事にきっと色々な不自由さを感じたはずだ。
好きでも交際を大っぴらに出来ないのは、今も昔も変わらない。
だからこそ、今度はちゃんと幸子の心を、僕が守ってやらなければいけない。
「あら、幸子ちゃん。おはよう? 昨日はよく眠れた?」
シャワーを済ませ、それなりに身支度を整えた幸子が階段を降りて来た。
「はい。ぐっすり眠れました。……あの、シャワーお借りしちゃって、すみません」
「ああ、良いのよ? 遠慮なく使って。それに檜が何か嫌な事をしたら、真っ先にアタシに言ってくれたらいいから」
「オイ」
ーー今のは聞き捨てならないぞ。
幸子は母さんを見て、いえいえと両手を振っていた。



