「……ばっ! き、聞いてたのかよ??」
「聞いてたんじゃなくて、聞こえたの。良次さんは遅くまでテレビを見てたから気付いてなかったけど。一応、実家だって事も忘れないでね? 幸子ちゃんが気にしたら不憫でしょ?」
「……あー…、うん」
ーーそう言えば昨日ヤる前に待ったをかけられた。それなのに夢中で幸子を抱いたから……。
「それじゃあ、ここにいる間は幸子とするなって事?」
母さんは僕をひと睨みし、ため息を吐いた。
「別にしても良いわよ? それはあんた達二人の問題だし、あんたは我慢したくないんでしょ?」
「……あ、うん……」
「それに親元だからあの子にもそれなりの恥じらいはあると思うし。ただもうちょっと彼女の事も考えて、控えめにやりなさい。檜の方が若いからって体力に任せてしたら向こうが辛くなるでしょ? 女の子には優しく、ね??」
「……。はい」
変に釘を刺され、僕は頭を掻いた。
この際ホテルに行ったら声の問題はないだろう、とも思うが。母さんが言いたいのはそんな事じゃない。
好きな人を思い遣る事、いずれ夫婦になるんだから、がむしゃらに行動するな、そういう事だ。
僕は昔から、好きの気持ちだけで突っ走って、周りが見えずに失敗する事がよくあった。



