「あたし。檜が思ってるほど、良い女じゃないよ?
嫉妬深くて独占欲も強くて、卑怯で狡くて嘘つきな偽善者。檜に近付く女はみんな消えれば良いって思ってた。死ねって思ってたの」
「……それは、まぁ。……なんて、ダークな」
檜は唖然とし、口元を引きつらせて笑っていた。
ーーやっぱり引いてる。
仕方なく、横目で彼を見てからため息をついた。
「だから。そんな自分が心底嫌で許せなくて、嫌いになったの。
あなたと一緒にいたら。あたし、どんどん醜くなってく。そう思って、嫌になった。こんな自分じゃ、もう幸せになれないって思ったの」
「……はっ、ハハ、そう。そっか……そう、なんだ」
檜は若干、疲れた感じで笑っていた。
「何だ。それでか。それで、あの時。俺と一緒だと幸せになれないって……そっか。そういう事か……」
あたしは言いたい事を吐き出したから、幾分スッキリしていたけれど、檜はあたしの毒を受け、項垂れていた。
「もう、言いたい事はそれだけ?」
「え?」
「幸子の、心に溜まった膿はそれだけかって聞いてんの」
「……う、うん」
そっか、と呟き、檜は顔を上げてあたしを見据えた。意思の強い茶色の瞳に、若干たじろいでしまう。
「それじゃあ、俺も言わせて貰うけど。馬鹿は幸子だろ?」
「……。はぁ?」



