ここであたしだけが、泣いて傷付くのは卑怯だ。そう思った。
「それと。一つ誤解してるから言うけど、俺は上河に、幸子の事を相談したりなんかしてない。
あいつは、色々と勘が鋭いから普段から俺の事を観察してて、ズバズバ言い当てたんだ。
メンバーが彼女のために髪を染めたって言ったもんだから、それだけで彼女の親に挨拶に行ったのかって問い詰められて。
ボーカルを辞めようと思う理由は、親に反対されたからでしょって図星突かれて。
結婚なんてまだまだ早い、ファンを裏切るなって怒られて。
……ただ、その事で上河が幸子に対して嫌なイメージを持ってしまったんだとしたら。俺が何も言わずに勝手に動いたから、それは俺のせいだと思ってる」
ーーは? 嫌なイメージ??
あたしは瞬時に顔をしかめた。
ーーそれってつまり、彼女という存在が障害になる、そういう意味でのイメージだよね?
「……馬鹿じゃないの?」
「え??」
「檜、お人好しにも程があるよ。嫌なイメージとかそんなんじゃない。あの子は最初からあたしと檜の事を疑ってた。檜の事が欲しいから、あたしと別れさせるのに必死だったんだよ?
教師だからってネタで脅されて。抱き合ってるあの写真だって突き付けられた。
檜の将来を考えて身を引けって言われて……あたしがどれだけ悔しい思いしたか、想像できる?」
「い、いや。全然、分かんないけど……」



