戻る途中、ふと視界に美波が映った。仕事の同僚の人が帰って行く様子で、それならまた美波と喋ろうかなぁと考える。

 ーーあれ?

 いつの間にかカイくんが現れて、美波にシャンパングラスを渡していた。

 二人が話している様子はどこか真剣で、カイくんが積極的に話題を振っている。

 周囲の騒めきと少し離れた距離から、会話の内容は分からないけれど、カイくんの言葉に美波が戸惑い、それでも嬉しそうに頷くのが見えた。

 美波の反応を受けて、カイくんも顔を綻ばせている。

 ーー何だろう? もしかして、カイくんって。美波のこと……?

「幸子っ!」

 不意に彼に呼ばれて顔を上げる。

 あたしは頬を窪ませ、檜の元に戻った。

 ***