「……それはもう、幸子から聞いていますよ?」
「え?」
ーー聞いている?
「幸子、駄目じゃない。ちゃんと秋月さんに言っておかないと」
「ごめんなさい」
ーーえ、どういう事? 俺、怒られる心配ない、って事?
「あのね、檜。
実家に帰って来てから……って言うより、過去を暴露するあの週刊誌が出てから。
お母さんに檜との事は色々と話してたの。檜がまだ高校生だったあの時、あたし達がどんな想いで付き合って、どんな形で別れたか。だから……。
流産した時の事も、檜が不安定なあたしを想って結婚しようって言ってくれた事も。全部……、話した」
「そう、なんだ?」
ーーあ。
なんだ。
もう解決済みなんだ……?
「……ハハ」
意気込んでいた分、変な脱力感で笑えてくる。
「やっぱり。自分に嘘がつけない誠実な人なんですね。記者会見を見ていて分かりましたよ?」
母親は情を込めた瞳を細め、「良かったわね、幸子」と嬉しそうに微笑んだ。
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