途端に後ろ暗い気持ちに襲われた。
僕は心の奥にずっと隠していた事実を、このまま言わずにいて良いものかと考えた。
勿論、言ってしまえば母親の心証が悪くなる事は予想出来た。でも、言わずにいるのはどこか卑怯に思われた。
僕が無言でいる間、女性三人で今後の挙式の準備や入籍の日取りなどが話し合われるが、堅い表情で俯く僕を見て場が静まった。
「檜? どうしたの?」
幸子が不安そうな顔をしている。
「……おじさんとおばさんに。まだ言って無かった事があります」
僕は幸子に視線をやってから、正面を見つめた。
「言って無かった事?」
父親と母親は当然ながらキョトンとしている。
「はい。前に……、高校生の時に挨拶にお邪魔した時。
実はあの一ヶ月前に幸子さんの妊娠が発覚して……。けれど検診を受けてすぐに流産が分かって。
そういうキッカケで僕らは結婚しようってなったんですけど。
すみません……、あの時はとても言い出せなくて、黙っていました」
そのまま「ごめんなさい」と頭を下げた。
「……檜」
隣りから幸子の呟きが聞こえる。感情が読み取れなくて不安になった。
この事実を言うべきかどうか、前持って幸子と話し合っていなかったので、勝手に言った事を申し訳なく思った。
ーーあ、れ?
意外な事に、幸子は微笑んでいた。



