「芸能界という仕事だからと言って、あの時秋月さんを否定した事、謝ります。
一生懸命やるので有ればそういった特殊な仕事を否定する気持ちなんて、本当は無いんです。
あの時はただ……。色眼鏡でしかあなたの事を見ていませんでした」
言い終えてすぐ、母親は「すみません」と頭を下げた。
「……えっ、いや。そんな」
何と言えばいいかまごつき、同時に胸が熱くなるのを感じていた。
「これからは幸子の事、よろしくお願いしますね?」
「え……!」
ドキン、と鼓動が鳴り、僕は目を見開いた。
ーーあ、あれ? 何だ、これ。俺から何も言って無いのに、良いのか?
不意に隣りに座った幸子と目が合った。彼女はにっこりと笑い、えくぼを浮かべていた。
「……あの。良いんですか??」
「え?」
「あ、いや。メディアではあんな大っぴらに言っておいて何ですけど。
幸子さんとの結婚、許して貰えるんですか?」
「ええ。反対する理由なんて、ひとつも有りませんよ?」
ーーマジか。
こんなにあっさりいくものかと、思わず自分の耳を疑った。
過去、あんなに猛反対されていただけに肩すかしをくった気分だ。
ーーあ。でも……。



