「おばさん」
「だから秋月さんが責任を感じる必要も無いの。それにもう過ぎた事よ?
ちゃんと綺麗に解決してますから、気にしないで下さいね?」
一人一人にコーヒーカップを配り、母親が真向かいに座った。
「そう、ですか」
そう言ったきり、僕は口を噤んだ。
かしこまった雰囲気から、みな無言でデザートを口に運び、弟さんとお嫁さんだけが何か喋っている。
母親がコーヒーカップを揃いの皿に置き、僕を真っ直ぐに見つめた。
「そう言えば。いつも主人と二人であなたのご活躍ぶりを拝見していたんですよ?」
ーーえ?
「芸能界なんてとても厳しい世界でコツコツと努力されて、たった数年でこんなに有名にも立派にもなられて。
さぞかし大変だったでしょう?」
そう言って微笑んだ母親を見て、僕は恥ずかしさに言葉を詰まらせた。
「……あ、いや、えっと。
僕の場合はその。ただ好きな事をやって。困った時は周りに助けられてきたので……そんな立派なものでも無いです」
そこで一旦目を落とし、若干冷めたコーヒーに口をつけた。
「幸子はね? 嫁にやる以上、厳しく育ててきたんです。だからその結婚相手もそれ相応に見合った人をって願望が強くて」
「……お母さん」



