ボーダーライン。Neo【下】


「おばさん」

「だから秋月さんが責任を感じる必要も無いの。それにもう過ぎた事よ?
 ちゃんと綺麗に解決してますから、気にしないで下さいね?」

 一人一人にコーヒーカップを配り、母親が真向かいに座った。

「そう、ですか」

 そう言ったきり、僕は口を噤んだ。

 かしこまった雰囲気から、みな無言でデザートを口に運び、弟さんとお嫁さんだけが何か喋っている。

 母親がコーヒーカップを揃いの皿に置き、僕を真っ直ぐに見つめた。

「そう言えば。いつも主人と二人であなたのご活躍ぶりを拝見していたんですよ?」

 ーーえ?

「芸能界なんてとても厳しい世界でコツコツと努力されて、たった数年でこんなに有名にも立派にもなられて。
 さぞかし大変だったでしょう?」

 そう言って微笑んだ母親を見て、僕は恥ずかしさに言葉を詰まらせた。

「……あ、いや、えっと。
 僕の場合はその。ただ好きな事をやって。困った時は周りに助けられてきたので……そんな立派なものでも無いです」

 そこで一旦目を落とし、若干冷めたコーヒーに口をつけた。

「幸子はね? 嫁にやる以上、厳しく育ててきたんです。だからその結婚相手もそれ相応に見合った人をって願望が強くて」

「……お母さん」