「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ?」
「……あ、いや」
ーーここは正直に言っても、良いかな?
「おばさんとお会いするのはこれが三回目なんですけど。前にその、叱られた記憶が強烈で」
言ってすぐ、すみません、と頭を下げた。
「まぁ、あの時はね……。まだ高校生だった秋月さんを、私はてっきり幸子の‘ヒモ’なんだと思い込んでましたから」
ーーえ、ヒモ……?
それすなわち、女性の給料を当てにして、養って貰ってる男の事だ。
僕は真顔で固まっていた。
高校生の頃の自分を思うと、確かにそう思われても仕方ない言動が多々あったのかもしれないが、当然ショックを受けないはずもない。
母親は「ちょっと、失礼しますね?」と言い残し、食べ終えた食器を下げ始めた。それを幸子が手伝っている。
食事の皿と入れ替わりに、食後のデザートが運ばれてくるのだが、幸子と母親が席を外している間に、弟さんがお嫁さんに言った。
「……しっかし、一時は嫌がらせが酷くてどうなるかと思ったよなぁ~?」
「だねー」
ーー嫌がらせ?
反射的に眉をひそめ、はす向かいの父親と目が合った。彼は苦い顔付きでサッと目を逸らした。
ーーえ。



