ボーダーライン。Neo【下】


「ありがとう。歌を好きでいてくれるのが、一番嬉しいよ」

「いえいえ。でも、今年立て続けに出されてるから、次はちょっと間が空きますよね?」

「うーん、どうかな? 次はカイ担当だし、割と早いんじゃないかな?」

「えっ! Kaiさんですか!? 嬉し〜いっ」

 ーーあれれ? もしかしてこの人、カイのファンだったのかな?

 そう言えば。今回多数の応募を集計したスタッフに、チラッと聞いた話だと、カイへの指名がダントツで多かったらしい。

 という事は、抽選漏れで僕が当たったんだな。

 ありがとう、と礼を言い、握手をしてから手を振った。そしてスタッフが次のファンを呼んでくれる、その繰り返しだった。

 予想以上にファンとの対話は面白かった。

 元々僕に好意的な人と話すからかもしれないが、話す内容は十人十色でテンションや声のトーンも様々だ。

 テントに入って早々、歓喜の声を上げ、震えてそのまま泣き出す子もいれば、今回の熱愛で説教じみた事を言ってくれるファンもいた。

 その中でも特別印象的だったのがこの子だ。

「……私。凄く言いづらいんですけど、実は……交際相手の方の悪口を、ネットに書き込んでしまって」

 ーーあ、そうなんだ?