ボーダーライン。Neo【下】


 中には相槌に困るファンもいるが、大体は自分の言いたい事を語り尽くして三分を使い果たしてくれるので、表情と視線さえ気を付けていれば大抵はオッケーだ。

「今日は来てくれてありがとう。これからも頑張るからね?」

 そう言って堅く握手を交わすと、女の子は飛び上がって喜び、テントを出て行った。

「次の方、どうぞ?」

 スタッフに促され、次の女性が入ってくる。

「あの、ご結婚おめでとうございます」

 そうそう。何人かのファンにはこういった祝辞を述べてくれる人もいた。

「ありがとう。急に結婚って話になっちゃってごめんね?」

「いえ、そんな。それにHinokiさんの人生はHinokiさんのものなので。ファンがそれを縛るのは良くないと思います」

「……そっか。そう言って貰えると嬉しいよ。今回のスキャンダルでは、沢山の人に迷惑を掛けたし、社長からも大分と怒られたからさ」

「そうなんですか。きっとHinokiさんの存在が大切だったからですよね。

 私も、熱愛が出た時はショックはショックだったんですけど、空港でのあの動画で、あ、本気なんだなっていうのは伝わったので。

 だから、これからも歌を出してくれるなら、何も問題は無いです」

 中々に大人な意見だなと思った。それに純粋にFAVORITEの曲そのものが好きだと言ってくれるファンが、僕は一番嬉しかった。