ボーダーライン。Neo【下】


 ◇ ♂

「今日は来てくれてありがとう、これからも頑張るからね?」

 そう言って目の前の女の子と握手をすると、女の子は目に涙を浮かべ破顔した。

 次の方どうぞ、とスタッフに呼ばれ、また別の女の子が簡易テントの中に入って来る。

 三分きっかりの会話をしなければいけないので、余り会話を弾ませるのもいけないし、ちゃんと相槌を打って僕なりの意見も述べなければいけない。

 ファンの質問には出来る範囲で答え、笑顔を絶やさない。これが人数を重ねてくると中々大変だった。

「私、デビュー当時からのファンで、Hinokiさんの裏声、すっごく好きなんです!」

「そうなんだ? ありがとう」

 ファンの子は大抵何がどう好きか、どの曲が好きかを熱心に伝えてくれる。

 FAVORITEが好きだと言ってくれる子もいれば、僕自身の何処そこが好きだと言ってくれる子もいる。断トツで言われたのが裏声と目だ。

「毎朝の通勤時間に聴いて癒されてるんです。この間出したFlowerもめっちゃキュンキュンきました。特にジャケットの表紙が良かったです!」

「ああ、あの向日葵の?」

「そうです。Hinokiさんの表情が素敵で即買いでした」

「そっか」