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「今日は来てくれてありがとう、これからも頑張るからね?」
そう言って目の前の女の子と握手をすると、女の子は目に涙を浮かべ破顔した。
次の方どうぞ、とスタッフに呼ばれ、また別の女の子が簡易テントの中に入って来る。
三分きっかりの会話をしなければいけないので、余り会話を弾ませるのもいけないし、ちゃんと相槌を打って僕なりの意見も述べなければいけない。
ファンの質問には出来る範囲で答え、笑顔を絶やさない。これが人数を重ねてくると中々大変だった。
「私、デビュー当時からのファンで、Hinokiさんの裏声、すっごく好きなんです!」
「そうなんだ? ありがとう」
ファンの子は大抵何がどう好きか、どの曲が好きかを熱心に伝えてくれる。
FAVORITEが好きだと言ってくれる子もいれば、僕自身の何処そこが好きだと言ってくれる子もいる。断トツで言われたのが裏声と目だ。
「毎朝の通勤時間に聴いて癒されてるんです。この間出したFlowerもめっちゃキュンキュンきました。特にジャケットの表紙が良かったです!」
「ああ、あの向日葵の?」
「そうです。Hinokiさんの表情が素敵で即買いでした」
「そっか」



