「……じ、実家にって事は。挨拶に来るって事?」
そう言って間もなく、すぐ側にいた母と目が合った。
『そう。八月の十一日から十四日までの間で……お母さんに予定確認して貰っても良い?』
「……あ、うん。分かった」
通話を繋いだままで母の元に行き、檜の用件を簡単に説明する。
母は嬉しそうに、あら、と弾んだ声を上げ、それなら十二日が良いと言っていた。その日なら家族みんなが揃っているので都合が良いらしい。
「あ。ごめんね、お待たせしちゃって。お母さん、十二日が良いって言ってた」
『十二日か。分かった。じゃあその日程でマネージャーに伝えておくから、時間についてはまた分かったらメールして?
合わせて直接そっちに向かうから』
「うん。分かった」
『……会えるの、楽しみにしてる。じゃあ』
電話を切ると、自然と顔がにやけてきた。
ーー嘘みたいっ。檜に会えるんだ、やっとやっと……!
スマホを持ったまま、はしゃぐあたしを、母が喜んで見ている。
その時、手の中のスマホがまた音を鳴らした。
ーーえ。何だろう? 檜ってば言い忘れ?
てっきり彼からの電話だと思ってディスプレイを見るが、そこに表示されていたのは登録していない十一桁の番号だった。
ーーだれ?
一瞬、不安から眉をひそめるが。090から始まる数字の羅列に見覚えがあると思った。
ーーあ! もしかして。
あの人かもしれない、あたしはそう思い、恐々と回線を繋いだ。
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