「何で別れを選んだのか、幸子の本音が知りたい」
ーー本音って。
ついさっきまで、飛行機の中で日記を読み返していたので、その理由は考えるまでもなく思い出せる。
あたしは俯き、暫し口を閉ざした。
本音という事は。あの醜い自分をさらけ出さなければいけない。
一瞬、嫌だなと思ったが。それも今さらかもしれない。
何も言わずに、自分の良い部分だけを見せ続けていたら、きっとまた限界がくる。
だからあたしは、言える範囲で話す事にした。もしかしたら、檜に引かれるかもしれないけど。もう隠す事も出来ない。
「あなたが高三の時。あたしの親に、結婚を反対されたよね? あの時、もっとちゃんと檜と会って、お互いの事を話し合えば良かったって、後悔してたの」
「うん。それは俺も……」
「結婚の事ばかりでムキにならずに、あなたとちゃんと一緒にいる方法を、二人で考えるべきだった」
「確かに……そうだな。あの頃は……。正直言うと逃げてた。結婚を許して貰えないのは俺のせいだったし。デビューも間近だったから、仕事の方を優先して、考える事から逃げてた」
あたしはしんみりと檜を見つめた。そして小さく吐息をつく。
「でも。嘘だったんだよね?」
「嘘? 何が?」



