ボーダーライン。Neo【下】


 ◇ ♀

 檜の記者会見に続き、笹峰優羽さんの記事が出てから、熱愛の事態は急速に緩和された。

 芸能ニュースで報道される内容も、Hinokiの結婚を応援する内容や、清純派女優の片思いに同情する声が主に語られ、あたしは毎日を平穏に過ごした。

 一時酷かった実家への嫌がらせも、徐々に減っていき、日中、たまに無言電話が掛かってくる程度になった。

 折りを見て、両親が警察に被害届を提出した成果も大きいのだろう。
 夜、巡回に回る警邏(けいら)の方が尽力してくれたのかもしれない。

 直接家が被害を受ける心配も無くなった。

「あ、そうみたいだね? テレビでファンサービスの告知やってるの見たよ?」

 リビングでくつろぎながら、檜と電話で話していた。

『そう。来週なんだけどさ、まぁ……。直接ファンの人と話す機会なんて今まで無かったし、頑張るよ』

「うん。真面目に取り組めばみんな檜の良さを再認識してくれるよ。……なんて、ちょっと妬けちゃうけどね〜」

『アハハ。……あ、でさぁ。用件なんだけど』

「え、うん?」

 ーーファンサービスの事が用件じゃないんだ

 てっきりそうだと思っていた。

『ファンサのイベントが終わってから、それぞれ一日だけ休み貰える様になって。俺、その日幸子の実家に行こうと思ってるんだけど……都合聞いても良いかな?』

 ーーえ。