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檜の記者会見に続き、笹峰優羽さんの記事が出てから、熱愛の事態は急速に緩和された。
芸能ニュースで報道される内容も、Hinokiの結婚を応援する内容や、清純派女優の片思いに同情する声が主に語られ、あたしは毎日を平穏に過ごした。
一時酷かった実家への嫌がらせも、徐々に減っていき、日中、たまに無言電話が掛かってくる程度になった。
折りを見て、両親が警察に被害届を提出した成果も大きいのだろう。
夜、巡回に回る警邏の方が尽力してくれたのかもしれない。
直接家が被害を受ける心配も無くなった。
「あ、そうみたいだね? テレビでファンサービスの告知やってるの見たよ?」
リビングでくつろぎながら、檜と電話で話していた。
『そう。来週なんだけどさ、まぁ……。直接ファンの人と話す機会なんて今まで無かったし、頑張るよ』
「うん。真面目に取り組めばみんな檜の良さを再認識してくれるよ。……なんて、ちょっと妬けちゃうけどね〜」
『アハハ。……あ、でさぁ。用件なんだけど』
「え、うん?」
ーーファンサービスの事が用件じゃないんだ
てっきりそうだと思っていた。
『ファンサのイベントが終わってから、それぞれ一日だけ休み貰える様になって。俺、その日幸子の実家に行こうと思ってるんだけど……都合聞いても良いかな?』
ーーえ。



