『……構いません、私は』
ーーん? 何だろう?
『でも。関係ない、なんて。言わないで下さい』
「あ、いや。ええと、そういうつもりでは」
ーー言い方がまずかったのか。
若干慌てるが、彼女は笑みを含んだ声で、分かってますと言った。
『それに、お礼なんて必要ないです』
「え?」
『私は。私自身のけじめのためにやっただけですから』
ーーけじめ?
『……本当に。好きだったんですよ? 記事を読んでちゃんと伝わりましたか?』
笹峰さんの優しい声に結んだ口を開け、ええ、と答えていた。
「笹峰さんの気持ち、凄く嬉しかったです」
『良かった。喜んで貰えて。
先日の記者会見、拝見しました。とても感動しました』
「……え。ああ、ありがとうございます」
一瞬キョトンとし、つい頭を下げてしまう。僅かながら緊張している自分に、苦笑が漏れた。
『大切な彼女さんとの事も、おめでとうございます。結婚式はされるんですか? 御身内だけの式ですか?」
「……あ、いや。それはまだ、これからで」
幸子の事を話題に出され、少し気恥ずかしくなる。
「ここだけの話、実は彼女の両親への挨拶も、まだこれからなんです」
メディアを通して、結婚を公に発表したが、肝心の許しはまだ得ていない。



