ボーダーライン。Neo【下】


 正直なところ、読んでいてかなり恥ずかしかった。

「何だよ、檜〜っ、優羽ちゃんからモテモテじゃん?」

 そして、楽屋で読んだ事を深く後悔した。雑誌を覗き込んだ陸と陽介に思い切り冷やかされ、カイは楽しそうに笑っていた。

 その日の仕事を終え、僕は帰宅するなり電話を掛けた。

 以前、笹峰さんに貰ったメモ書きを頼りにコールを鳴らすと、十回を超えてようやく繋がった。

『……も、もしもし?』

 電話口の彼女はこちらを訝しむ声で答えた。

「あ、もしもし? 笹峰優羽さんの携帯電話でお間違いないでしょうか?」

『あの……。どちら様ですか?』

「ああ、失礼しました。
 ご無沙汰しています。FAVORITEのHinokiです」

『えっ! ひ、Hinokiさん!??』

「はい。あの、今お時間大丈夫でしょうか?」

 右手に嵌めたクロノグラフの腕時計に目を落とし、ソファーに座った。時刻は午後八時を過ぎている。

『ええ……。びっくりしました。私の番号、坂城さんから?』

 ーーああ、そうだった。

 前に渡されたアドレスは既に無くしたと嘘をついていたので、そうです、とまた僕は嘘をつく。

「今週の週刊TRY、読みましたよ。笹峰さんには直接関係の無い事だったのに、ありがとうございました」

 そう礼を述べたのだが、笹峰さんは幾らか押し黙り、いえ、と暗い声で返事をした。