◇ ♂
「この機会に乗じて、ファンサを実施しようと思う」
記者会見後、社長から招集をかけられた。メンバーやマネージャーの竹ちゃんと共に社長室を訪れるなり、今の言葉を聞いた。
「ファンサ……って」
キョトンとした顔で陸が呟く。
ーー手を振ったり、ウインクしたり……する事か? でもそれってライブ中にする事だよな?
首を捻って考えていると、社長はファンサービスの内容についてを語った。
「ある意味、アイドルの真似事みたいにはなるが。トークと兼ねて握手会をしようと考えている」
「え! あ、握手会、ですか?」
僕たちはみなギョッとしていた。
トークイベントとか握手会とか、ロックバンドでは余り例を見ないからだ。
そういう過剰なサービスは、女の子のアイドルグループがするものだと思い込んでいた。
「檜が会見をした事によって、世間のイメージはまた大きく変わるだろう。
握手会を告知したら自らを安売りしているという意見も上がるかもしれないが、そんな文句はお前たちの存在で充分掻き消す事が出来る。
勿論、アンチファンの対応を考えて警備員も配置する。
一日八時間のトークと握手を五日程度、ファン一人につき三分ずつと考えて、それぞれが八百人と対話する。やれるか?」



