ボーダーライン。Neo【下】


 やはり自意識過剰かもしれないと思いつつ、あたしの結婚が無くなって海外行きを辞めたのだとしたら、嬉しいと思ってしまう。

「檜にしては……随分と投げやりな考えだね?」

 素の自分をさらけ出せないあたしは、受け答えも可愛くない。

「俺さ。駄目なんだよ。幸子の事になると……。感情を優先して、冷静な判断が出来なくなる」

 困ったように眉を下げたその横顔を見つめていると、チラッと視線を投げられた。

「この際だからさ。色々と腹割って話さない?」

「え?」

「ほら、せっかく日本じゃないんだし。何言ってもオフレコだし」

「……オフレコって。いっぱい人居るけど?」

 言いながら、あたしは周囲を手で差し示した。

「でも、みんなそれぞれ他人に無関心だし。俺がFAVORITEのHinokiだって誰も知らない。
 お陰で指も差されないし視線すら感じない」

 そう言って檜は肩をすくめた。その仕草が可愛くて、あたしはフッと頬を緩めた。

「そっか。そういう意味ではオフレコなんだね?」

「そ」

「……でもね。話って言われても、何から話していいか分からない」

「昔の事でいいよ。幸子が俺に対して嫌だと思ってた事とか、そういうのが知りたい」

 ーー嫌だと思ってた事?