『僕が彼女と結ばれる事で、周りにいる沢山の方を傷付けてしまったり、もしかしたら僕や彼女の友人知人に、知らず知らず迷惑を掛けているかもしれません。
今回僕の我が儘で、結婚の発表と、それに付随して謝罪を申し上げてきましたが、何か不愉快な思いをさせてしまったならこの場をお借りしてお詫び申し上げます。
納得しかねる点は多々有るかと思いますが……。
今後とも温かい目で応援して頂ければ、嬉しく思います』
そこで言葉を切ると、檜は椅子を引き、おもむろに立ち上がった。
『本日は誠にありがとうございました!』
一斉に光るフラッシュの中、腰から水平に頭を下げる。
その姿を見て、一気に胸が熱くなった。
視界が歪み、あたしは唇を震わせた。
ーー檜……っ!
「会いたいよぉ……っ」
とめどなく伝う涙を拭いもせずに、あたしは子供みたいに泣きじゃくった。
ロンドンの街を恋人として過ごした時間。ホルボーンの家で声を潜め、愛し合った時間。
あれからもう、1ヶ月だ。
電話を通して声を聞き、メディアを通してその姿を見つめる。
直接会えないのだから、そうする事で寂しさを紛らわせるしかないのだが、もう限界だった。
檜の愛情を感じ、会いたくてたまらなかった。



