ボーダーライン。Neo【下】


 テレビのディスプレイ越しに一瞬檜と目が合った気がして、あたしはドキッとした。

 普段、音楽番組で見るような華やかな装いは全く無く、素の彼を思わせる風貌だった。

 明るい茶髪を感じよくまとめ、顔には茶色いフレームの伊達眼鏡を掛けている。

 檜の映像がズームアウトし、男性アナウンサーがマイクを片手に実況している。

『……えー、本日はFAVORITEのボーカリスト、Hinokiさんの記者発表という事で、数多くの報道陣が詰め寄せております。
 熱愛発覚から約一ヶ月。世間を騒がせてきたHinokiさんは、これから何を語るのでしょうか?
 なお、ここからの放送は生放送とさせて頂きますので……』

 アナウンサーの声を上の空で聞き流し、あたしは檜の発表が始まるのを今か今かと待った。

 膝の上で組んだ両手に自然と力が入る。

 絶え間なくフラッシュが光るなか、やがて檜は手前のマイクへ声を発した。

『こんにちは。FAVORITEのボーカリスト、Hinokiです。

 今日は僕個人の記者発表という事で、多くの報道陣の皆さま、関係者の皆さま、そして視聴者の皆さまのお時間を割いて頂いた事に……、またこうした会見の場を設けて頂いた事にも、深く感謝しております。

 ありがとうございます。

 そして発表に移らせて頂く前に、これまでマスコミの方からの質疑に何も応えられずにいた事を、併せてお詫び申し上げます』

 そこで檜は軽く頭を下げた。