ボーダーライン。Neo【下】


 ーーー10:59

 画面の右上に表示された時刻を見て、いよいよなんだ、とあたしは自分の事のように緊張していた。あと数十秒後に檜の姿が映る。

「……今はさすがに、掛かって来ないわね」

 リビングの三段ボックスに置いた子機を見つめ、母が皮肉めいて言う。

「本当だね」

 毎日一時間か二時間おきにキッカリ掛かってくる無言電話だが、今日は朝九時を最後にまだ掛かってきていない。

 嫌がらせの主犯がHinokiのファンによるものだという事は明らかだった。

「お、始まったぞ!」

 父が言い、チャンネルでテレビのボリュームを上げた。

 CMから何処かの会見会場へ場面が変わり、パシャパシャとフラッシュのたく音がした。

 その光を浴びながら、白いカッターシャツに細めのパンツ姿で、檜がテレビ画面に現れた。

 右手前方のドアから入り、予め用意された椅子に腰を下ろす。

 檜のすぐ後ろをマネージャーらしき男性が付いて歩いていたが、彼は会見用の長机の端に立ち、直ぐにカメラの視野から消えた。

 ぐるりと半円を描くように置かれた沢山のマイクスタンドに、ペットボトルの水も用意されている。拍手喝采を思わせるフラッシュ音が鳴り響いていた。