ボーダーライン。Neo【下】


「俺から隠し事しないって言ったくせに……黙っててごめん」

『ううん。脅迫なんて物騒な事、あたしだって同じ立場になったら、言えないと思う』

「……そっか。そう言って貰えると助かる」

『あたしね。檜のそういう、優しい所が好き』

 鼓膜を揺らす幸子の声を、いつも以上に愛おしく感じる。

 幸子と逢えなくなってからそろそろ一ヶ月だ。もう全然足りていなかった。

「俺も好きだよ、幸子。早く逢いたい」

 僕の中で、格段に幸子が不足していると感じた。

『……ん。あたしも』

 幸子が洟をすする気配を察し、相変わらずの泣き虫なんだなぁと笑みをもらした。

「それで。そっちは?」

『え?』

「何か変わった事は無かった?」

 一瞬の間を置いてから、明るい声が届く。

『ううん。こっちは何も。……ずっと家にいるから退屈なぐらい』

「そっか……それなら良いんだけど」

 僕は知らなかった。この時、幸子の家が大変な目に遭っていて、幸子が苦しんでいる事を。

 それも後になってから知る事になるのだが、彼女の言葉を鵜呑みにし、完全に安心しきっていた。

 ***