ボーダーライン。Neo【下】


「俺さ。変に心配掛けたくなくて……幸子にまだ言って無かった事があるんだ」

 暫しの沈黙が下りる。

『なに……?』

 声のトーンからどんな感情かは読み取れない。秘密にしていた事を怒られるかもしれない。

「実はそのカサイさんと、プライベートで会った事がある」

『えっ! い、いつ??』

 いつと聞かれて思い出すのは五月だ。

『プライベートでって。何で? 偶然ばったりとか、そんなんじゃないんでしょう?』

 ーー慰謝料を払ってるんだから。脅迫された事も言うべきだよな?

『檜?』

 幸子の気持ちを思うとそのまま言っても良かったのか、今さら躊躇いが生じる。

 黙考していると、やがて彼女も口を閉ざした。

「五月の終わり。幸子の携帯から直接電話が有って、カサイさんに呼び出された」

『……五月の、終わり?』

 そう言って間もなく、ハッと息を飲む様子が伝わった。

 僕は覚悟を決め、包み隠さず全部を話した。カサイに幸子との情事を責められ、慰謝料を請求された事。

 つい最近ではあるが、それを既に支払っている事。

 幸子は勿論、言葉を無くす程に驚いていた。

 でも僕が取った行動に関しては、ただ『うんうん』と相槌を打っていた。