「俺さ。変に心配掛けたくなくて……幸子にまだ言って無かった事があるんだ」
暫しの沈黙が下りる。
『なに……?』
声のトーンからどんな感情かは読み取れない。秘密にしていた事を怒られるかもしれない。
「実はそのカサイさんと、プライベートで会った事がある」
『えっ! い、いつ??』
いつと聞かれて思い出すのは五月だ。
『プライベートでって。何で? 偶然ばったりとか、そんなんじゃないんでしょう?』
ーー慰謝料を払ってるんだから。脅迫された事も言うべきだよな?
『檜?』
幸子の気持ちを思うとそのまま言っても良かったのか、今さら躊躇いが生じる。
黙考していると、やがて彼女も口を閉ざした。
「五月の終わり。幸子の携帯から直接電話が有って、カサイさんに呼び出された」
『……五月の、終わり?』
そう言って間もなく、ハッと息を飲む様子が伝わった。
僕は覚悟を決め、包み隠さず全部を話した。カサイに幸子との情事を責められ、慰謝料を請求された事。
つい最近ではあるが、それを既に支払っている事。
幸子は勿論、言葉を無くす程に驚いていた。
でも僕が取った行動に関しては、ただ『うんうん』と相槌を打っていた。



