「会いたかった」
不意にドキッとし、おずおずと隣りに目を向ける。
「ずっと会いたかった」
彼の頬もあたしと一緒で赤かった。
「……あ。あたしも。檜に、会いたかった」
隣同士で見つめ合ったまま、あたし達はお互いに照れていた。
「カッコつけて握手とかして別れたけどさ。俺、結局は未練たらたらで、幸子の事ばっか考えてた」
「そう……なんだ?」
ーーだとしたら嬉しい。
「ふっ。途中、海外とか行きかけたし」
「え。海外って? 今ロンドンにいるけど、そういう意味じゃなくて?」
「うん。仕事でね、海外のバンドと組まないかって、俺とカイだけに引き抜きの話が来て。
で、俺だけ一年契約で向こうに行こうかなって思ってたんだ。結局は辞めたけど」
ーー行ってたら。今ここで会う事も無かったって事よね?
「……何で、そんな」
「カイにはさ、FAVORITEがバラバラになるからって止められたけど。日本に留まるのが嫌になったって言うか。まぁ、よく言ったら海外との繋がりが出来るって思ったのもそうだけど。
幸子がさ、結婚しちゃうんだったら。この際新しい環境に身を置いて……新しい出会いとかあったらいいなって、そんな風に考えてた」
ーーあたしが結婚するつもりだったから?



