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『え? 記者会見?』
電話の向こうで幸子の驚く顔が目に浮かぶ。
夜の十時を過ぎ、幸子から電話が掛かってきた。いつもの挨拶に返事をし、早速用件を切り出した。
「そう。来週の月曜、十一時から。もうマスコミには発表済みだから生放送でやると思う」
幸子は驚いたせいか無言だった。
ーーあ。
「ごめん、二人の事なのに……勝手に決めちゃって」
『う、ううん! それは全然っ! てか、記者会見でなに言うつもり?』
「……結婚する事を公表する」
幸子は、え、と声を詰まらせた。
『そ、それじゃあ。事務所の社長さんには……?』
「うん。ちゃんと許して貰ったよ?」
『本当に?』
「うん」
『……そっか、良かったぁ』
彼女の安心しきった声を聞き、自然と顔が綻んだ。
「ーーあ。あとそれと。結婚報告の他に謝罪もしようと思ってる」
「謝罪? 謝罪って……誰に??」
出来ればカサイと会った事は黙っておきたかった。しかし、月曜の会見を思うと先に言っておかなければいけない。
「あのさ。幸子の元婚約者、カサイって人だっけ?」
『……えっ??』
幸子は予想外だったせいか、頓狂な声を上げた。



