「……ごちそうさま」
まるでお通夜みたいな重苦しい空気の中、あたしは食べた食器をシンクに運んだ。
そのまま洗おうとすると、お嫁さんの由美ちゃんに止められた。
「洗い物なら私がしますから、お義姉ちゃんは休んでて下さい。傷口が化膿すると駄目なんで」
由美ちゃんの言葉をありがたく受け、あたしは隣りのリビングに移った。
「俺、思ったんだけどさ」
あたしがダイニングを出てから少しして、遠慮がちな悠大の声が磨りガラス越しに聞こえた。
「……これって嫌がらせなんじゃない?」
一番考えたくない可能性だったが、あたしもそうだと思っていた。
閑寂とした室内に、食器をすすぐ流水音だけがやけに響いて聞こえた。
あたしはリビングにあるソファーに座っているが、磨り硝子越しに意識を向け、悠大の言葉に耳をそばだてている。
鎖骨に掛かる向日葵のネックレスを自然と握り締めた。
「今日姉ちゃんに届いたこの手紙。カッターの刃の他にこんなメモ書きが入ってたんだ」
そう言って悠大が、父と母に手紙を見せる気配がするが、どんな内容かは見ていないので分からない。
「こういう状況だから思うのかもしんないけど、多分タロウの事だって」
「ええ、そうね」



