廊下を歩きながら、サンキュ、と礼を述べる。

「ううん、そんな事ない。それに邪魔した分はきっちり返したかった、ただそれだけだから」

 茜は茶目っ気に笑い、肩をすくめた。

「それに。わたしの方こそありがとね?」

「え? 俺? 感謝される事なんて何もしてないけど?」

「いーから、いーから。
 わたしはこれからも仕事頑張るし、いつかは竹原さんを凌ぐマネージャーになってみせる! その目標が出来たのは檜のお陰だもの」

 だから何で俺なんだ、と思いはするが、深く問い詰めるのはやめにした。

「ふぅん。なんかよく分かんないけど。
 まぁ、頑張れば?」

「うん!」

 フッと小さく笑いかけると、茜は彼女らしい笑みで微笑んでいた。

 ***