僕は一旦口を噤み、ジッと社長の目を見つめた。
「記事に挙げられた“被害男性”にも……ケジメとして、きっちりとした謝罪がしたいんです」
「は?」
社長は暫し押し黙り、「正気か?」と尋ねた。
「はい。気持ちばかりの金額ですが、もう相手に慰謝料も振り込んでおきました」
「はぁッ!? 慰謝料??」
向かいに座る社長は泡を食って目を見開いていた。隣りに座る茜も絶句し、信じられないと呟いている。
「振り込んだって、檜。葛西さんにだよね!? いつ連絡取ったの??」
「いつって。会ったのは五月だからもう大分前になるけど。口座番号を渡されて、慰謝料を要求されてたから」
「だ、だからって何で払うのよ?? それがまた記事になったらっ」
「これだけの事実が既にバレてるんだ。払えと訴えられる前にちゃんと責任はとっておくべきだろ?」
茜は呆れて言葉をなくしていた。
当の社長は片手で顔を覆いながら俯き、無言を貫いている。
ーーヤバい。また社長を怒らせた、かも?
僕は心配になって、あの、と声を掛けるが。
「……ふ…っ。ハハ…っ! アハハハハハハっ…!」
突如上がる高笑いに、ビクッと肩を震わせた。



