ボーダーライン。Neo【下】


 ーー大人の事情。

 芸能プロダクションを経営する上での事情、そういう事だろうか?

 それから二人は内輪話をポツポツとしていて、僕は何の事か分からずに首を捻っていた。

「約束の十二時だ」

 ーーあ! やべっ、て言うかもう過ぎてるし。

 僕は慌てて扉と距離を開けた。

「ああ、戻らなくて良い。茜もここにいなさい。

 ……檜、来てるんだろう?」

 ーーちゃっかり来てる事までバレてるし。

 どこか決まりが悪く、失礼します、と躊躇いがちに扉を開けた。

 立ち聞きしてごめん、と茜に目で告げると、彼女はたちまち頬を赤らめた。

「檜も、結婚についての用件で良かったんだよな?」

「はい」

 それじゃあ来なさい、と手招きされ、僕と茜はソファーに腰を下ろした。

「この数日、僕なりに考えて出した答えが有ります。今日は社長にそれをお願いしたくて来ました」

「……ほう、それで?」

「結婚を許して頂く事を前提に、記者会見を開かせて下さい」

 なるほど、と頷き、社長は茜に目配せする。さっきの茜の意見と同一だと言っているようだった。

「結婚をマスコミに広く公表したい、そういう事か?」

「それもそうですが……」