ーー大人の事情。
芸能プロダクションを経営する上での事情、そういう事だろうか?
それから二人は内輪話をポツポツとしていて、僕は何の事か分からずに首を捻っていた。
「約束の十二時だ」
ーーあ! やべっ、て言うかもう過ぎてるし。
僕は慌てて扉と距離を開けた。
「ああ、戻らなくて良い。茜もここにいなさい。
……檜、来てるんだろう?」
ーーちゃっかり来てる事までバレてるし。
どこか決まりが悪く、失礼します、と躊躇いがちに扉を開けた。
立ち聞きしてごめん、と茜に目で告げると、彼女はたちまち頬を赤らめた。
「檜も、結婚についての用件で良かったんだよな?」
「はい」
それじゃあ来なさい、と手招きされ、僕と茜はソファーに腰を下ろした。
「この数日、僕なりに考えて出した答えが有ります。今日は社長にそれをお願いしたくて来ました」
「……ほう、それで?」
「結婚を許して頂く事を前提に、記者会見を開かせて下さい」
なるほど、と頷き、社長は茜に目配せする。さっきの茜の意見と同一だと言っているようだった。
「結婚をマスコミに広く公表したい、そういう事か?」
「それもそうですが……」



