この世の中の人類を運のいいヤツと悪いヤツに分けるならば、わたしは間違いなく悪いヤツに分類される。

わたしは、けっして不細工に生まれついたわけではないと思う。
眼はぱちりと大きいし、くっきりと二重でもある。
鼻だってどこかを向いているわけではない。
頭だって、決して悪いわけではない。

体育だって、特別運動神経がいいわけではないけれど、ガッツを見せて取り組めば先生はいい点数をつけてくれた。
だから、わたし、山吹さくら個人で言えば、顔はそこそこ良くて、頭もいい。
才色兼備といえばいいすぎだと思うのだけれど、まあそれなりに、わたしが再び来世に生きるとして、持って生まれたいと望むものは、今生でもだいたい神さまは持たせてくれていると思うのだ。


だけど、その運の良い方にふれている針が、勢いよく、反動さえもついて、逆方向へ触れてしまう、決定的なことがわたしにはある。

わたし、山吹さくらにとって、運の悪さを決定的に運命づけたことは、山吹かおりが姉だったこと。

山吹かおり。

一年違いで同じ日に生まれた姉。

わたし達は、両親のそれぞれ片方の性質を色濃く受け継いだ、両極端の傑作だった。

姉は、白雪姫もかくやあらんというような色白の肌、濡れたような黒髪。
5月になれば日傘が、姉を紫外線から守る。そうでないとすぐに赤く焼けてしまう。

もちろんその日傘は、晴雨兼用ではない。
日傘用だけの使用用途しかない、生成の麻の日傘である。