テンパる頭で考えても
 余計に脳がかき混ぜられちゃうだけ。



 焦る私の眼に、いきなり
 予想外の柔らかい笑顔が映り込んだ。



「春の頭ん中
 理解不能だな。マジで」



 え? 


 番犬さんが、フッとわらった。
 優しいお兄ちゃんみたいな笑顔で。


 フフフ。



「何?」



 ひょえ!



「今、俺を見て笑ったよな?」


「わ……笑っていません」


 ただ……


 春輝くんが言っていた通り……
 優しい人なんだろうなって
 思っただけです……



 また番犬さんの目が吊り上がり
 ぶっきらぼうな声に。



「俺は、マトイ。
 春から聞いてるだろ?」


「マー君?」


「その呼び方、ウサギはすんな!
 春にもやめろって言ってきたけど、
 あいつ聞かねえから。
 俺が怒鳴ったくらいじゃ」