「明梨んママにお願いされたんだけど、
僕なんて、たいしたことしてないんだよ。
明梨んパパと、ママと、慶くんと、
楽しくおしゃべりしてるだけだし」
え?
聞いてないよ。そんなこと。
いつからなの?
誰のお部屋で寝てるの?
聞きたいけれど、絶対に聞けない。
だって
『明梨んと一緒だよ』なんて
キュートな笑顔で言われたら、
私、大泣きしちゃいそうだから。
「明梨んパパはね、
トドメキの元総長さんなの。
慶くんの悩みを聞いてあげて、
優しいカウンセラーさんみたいなんだよ」
明梨んも
一緒にお喋りしてるんでしょ?
そう口から出そうになって、
慌てて口元を抑えたけれど。
は~。
心の痛みを吐き出したような
冷たいため息は、
指の間をすり抜けるように、漏れてしまう。



