「春輝くん、
 こんなところにいちゃ、ダメでしょ」



「ん?」



「もうすぐ、アミュレットのヒーローショーが
 始まる時間だよ」



 それなのに。
 なんでここにいるの?



 ファンに見つからないように
 女装して。


 私を建物の陰に連れてきたのは、
 なんで?



「だって、みゅうみゅうのこと、
 捕獲したくなっちゃったんだもん」



 本番直前に……私を捕獲?


 意味が……
 わからないんですけど……



 その時
 春輝くんの瞳が、しゅんと蔭った。



「だって、ショーが終わったら、
 みゅうみゅうは帰っちゃうでしょ? 
 僕に会わずに……」



 う……
 図星です……



 悲しみに包まれたように
 両肩を落とした春輝くんに、言えない。



 大きなイチョウの木の下で。

 ヒーローショーを見ないで帰ろうか、
 悩んでいましたなんて……