「マー君。 
 なに? いきなり……」



 手首をつかまれ、戸惑う僕。


 
 マー君はお構いなしに、
 僕をステージの袖に、引っ張っていく。



「ちょっと……どうしたの?」



「いる!」



「え?」



「だから、ウサギが見に来てるって
 言ってんの!」



 ウサギって……
 みゅうみゅうのことだよね?



「そんなはずないよ。
 だってみゅうみゅう、
 彼氏さんと遊園地に行くって……」



「そんなこと知らねえけど。
 確かにいるから。
 一番左後ろの、イチョウの木の下」



 マー君に促され、
 ステージ袖ののぞき穴から
 僕は、客席を覗いた。