「百目桃華さんのラジオ番組に、
春輝たち、もうすぐゲストで登場するから。
このビルの3階に上がって。
フロアに出れば、
ファンの子たちがわんさか集まってると思うから。
行けばわかるわ」
え? 私だけで?
「蓮見さんは、行かないんですか?」
「別の仕事に向かわなくちゃいけなくて。
帰り、送ってあげられなくて、ごめんね」
「いえ。電車で帰れますから」
ぺこりと頭を下げ、顔を上げると
太陽の光で輝くビー玉のような
キラキラな瞳が、私を見つめていた。
「美羽ちゃん。
うちの春輝はカッコよさは
物足りないかもしれないけれど。
世界一キュートなアイドルになれる男よ」
「冷血マネージャーの私が言うんだから、
間違いないでしょ?」
そう付け加え
目がなくなるほど微笑んでくれたけれど。
蓮見さんは
冷たい血なんて一滴も流れていない。
絶対に。
ただ
アミュレット愛が、誰よりも強いだけ。
春の日差しを浴びるタンポポのような
穏やかな笑顔を私に見せ、
蓮見さんの車は、走り去っていった。