「教えてください。
私、誘拐されてます?」
「冗談やめてよ。
笑いが止まんなくなるから」
「冗談じゃなくて……」
「春輝にお願いされたの」
「え?」
「美羽ちゃんを、
ラジオ局に連れて来てって」
春輝……くん?
春輝くんの名前が出てくるなんて
全く予想をしていなくて。
ぽかん。
鯉みたいに口が開いたまま
私は固まってしまった。
「あの子、言い出したら聞かないから」
えっと……
待って。待って。
頭の中を整理するから。
春輝くんが……え……と……
ム、ムリ。ムリ。
脳を整理しようとすればするほど、
余計にぐちゃぐちゃに
なってきちゃったから。



